| アツコ連載 12 言葉の横取りはやめましょうキャンペーン |
わたしは、よく主人の通院に一緒についていきました。
主人が一緒に来てほしいというからです。
主人は話すのが苦手で、ましてや複雑な自分の病気の症状を伝えるということが
なかなかできませんでした。
最初は、わたしは横で黙って聞いていたのですが、
ある日、主人が「ええと…お前代わりに説明してよ」と言うので、
いつも主人がわたしに訴えていることを、主治医の先生に伝えました。
「お前、うまいこと伝えるなぁ。これからは、俺の代わりにお前が説明してくれよ。
俺よりも、ずっと先生に伝わるわ。」
主人はそう言いました。
主人に褒められたのです。わたしはとてもうれしくなりました。
もともと人の気持ちを察するのが得意だったわたしにとっては、
「これで少しでも主人の病気を治す手伝いができる!」と思ったからです。
それからは、主人の代わりにわたしが、主治医に話すようになりました。
…これが、落とし穴だったのです。
察しがよくて、よく気がついて、相手の気持ちがわかってしまう。
相手の気持ちを代わりに表現することが得意だ。
これは、一見すると、とても素敵な「才能」です。
だけど…。
わたしは、主人から、「自分で伝えようとする力」を奪っていたのです。
そのせいで、主人は人と話すことがますます苦手になってしまいました。
わたしが、主人の代弁をしてしまったことで…。
誰かが、何かを伝えようとして、言葉につまってると、ついつい、
その人の代わりに、その人の気持ちを表現しようとしたことってありませんか?
「あなたって結局、こういうことが言いたいんでしょ?」
「あなたの言いたいことって要約するとこうよね?」
「わかる、わかるわよ。全部言わなくていいわ。あなたが伝えたいのはこういうことよね?」
みたいな感じで。
そう言われた側も、
「ええ!そう!まさにその通り!」
「そうよ!わたしの言いたいことはそれなの。ああ、どうしてわかるの?」
「あなたって、人の気持ちを代弁するの、ホントに得意よね」
と、まるで、自分がその言葉を吐いた気持ちになってすっきりするんです。
でも、それは大きな間違いでした。
代弁は、所詮、代弁なんです。
本当に言いたかったこととは違うのです。
これは、「言葉の横取り」に過ぎないのです。
それがわかった今、わたしは、絶対に「言葉の横取り」をしないことを決意しました。
その人が最後まで言い終わるまで待とうって。
その人が、その人の言葉で語ろうとする邪魔は絶対しないって。
今、主人は、必死で人と話そうと努力しています。
時々たどたどしい言い方になり、言葉に詰まって、で、わたしに助けを求める目をするときがあ
りますが、
わたしは黙って微笑み返すだけ。
「だいじょうぶ、必ず言葉は出てくる。あなたが伝えて!」と念じながら。
病院も主人一人に行ってもらうようにしました。
最初のころは主人は帰ってくると一人反省会ばっかり。
「あかんわ〜全然話できんかった!!お前一緒についてきてくれよ〜」
そのたびにわたしは
「ダメやって、自分で伝えたほうがいいってば。
伝え辛いなら、たどたどしいまんまでいいって。
それがそのまんま、あなたの状態なんやもん。」と言いつづけました。
そうです。伝え辛さも症状の一つかもしれないのです。
そして、何ヶ月かすぎ、主人に変化が起きはじめました。
もう、病院へは着いて来いとも言いません。
自分で病状を伝えることで、自分自身も、自分の病状を再確認できたり、
コミュニケーションのとこが不得手なのかを発見したり、
だんだんと、言葉数も増え、人と話すことも多くなり、
いまや、笑いをとるようになってきたのです。
主人の言葉が戻ってきたのです。
あの軽妙なやり取りでわたしを笑わせてくれるのです。
わたしには、思いもつかないギャグや話題。
ああ、わたしは、こんな素敵な部分を奪っていたのです。
もう、わたし、「言葉の横取り」は、絶対にやりません!!!
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